近年、統計的には土木災害は減少している。しかし、一旦災害が発生すると大きな影響をもたらすところに、現代社会の災害の特徴がある。しかも、危機管理によって担保したい市民の要望のレベルも高くなっている。
このような状況下において災害時の危機管理の実効性を高めるためには、危機管理に携わる者や組織が必要な危機管理の機能を理解し、災害時に確実に機能するように準備をしておくことが求められる。
危機管理に必要な機能としては、まず危機の認知機能がある。大雨が続いたときに洪水や土砂崩れを予感できなかったり地震発生時に津波に関する意識が出てこなかったりするようでは、危機管理を開始することさえできない。
次に必要なことは、危機管理に必要な人員・体制の確保である。この機能を確保するためには、まず危機管理担当者は、自分の安全を確保することから始めなくてはならない。
次に、人員の収集機能として、緊急連絡の機能の向上や集合するための手段を確保することが必要となる。この際、災害時の情報や交通インフラ等の環境の変化を考慮すべきことは言うまでも無い。
その次に必要となるのは、危機時に必要な判断を行う体制である。さらには、その判断を支える情報の収集も重要となる。通常の危機管理論と異なり、情報収集より判断機能を先に記したのは、必要な情報が揃わないと判断できないと考える体制では、危機対応が遅れがちとなるからである。危機時には情報が不足する場合も多い。このような場合にも、市民の安全のために何を実施するかという視点で、手遅れにならないよう手を打つこと。これが危機管理である。
株式会社三菱総合研究所
参与 野口和彦
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