気象庁の異常気象レポートによれば、世界の平均気温はこの100年に約1度上昇している。「最近50年間に観測された温暖化の殆どは二酸化炭素などの温室効果ガス濃度の増加に伴って生じた可能性が高い」とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は報告している。
地球温暖化というのは、惑星としての地球全体の温度が一様に高くなることではない。赤外線を吸収しやすい二酸化炭素が増えると、地表近くの空気が温められる。これが温室効果という現象なのだが、地表近くの温度が高くなれば上層の大気が冷えなければならない。地球という自然が釣り合いを取ろうとするのだ。
地表付近で空気が温められ上層で温度が下がると、大気は不安定になり、対流活動が活発になる。すると、強い低気圧や集中豪雨やが発生しやすくなる。温暖化の加速で台風等の熱帯性擾乱の風の強さや雨量の増加が懸念されているのはこうした理由があるからだ。
私たちが住むこの地域でも近年大きな気象災害が何度か生じている。特に一昨年9月、台風に刺激された秋雨前線からの局地的な豪雨と三重県内各地の大きな被害は記憶に新しい。
加速する温暖化を防ぐには二酸化炭素を減らすことしかない。IPCCは「二酸化炭素の放出量を今より50~70パーセント減らす必要がある」と言っている。これほどの削減は果たして可能か。現状のような生ぬるい防止策では無理だろう。とすれば、今後は気象異常や極端な天気が頻発するのは必然となる。それに伴う自然災害も起こりやすくなることを覚悟した生活を送る必要がありそうだ。それに備えるには何をすべきかが今問われている。
三重大学大学院生物資源学研究科
教授 福山 薫
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